インドネシアでヒッチハイクして優しさに触れた良いお話です。疑心暗鬼になりがちな海外での一人旅ですが、信じられる人もたくさんいると言うことですね。
無茶なことをした大学時代
初めて海外へ行ったのは大学三年生の時、私は30歳なので今から9年程前になります。
現在、仕事は設備関係の会社を営んでいます。振り返ると無茶なことをしたものだと思っています。しかし、その冒険心は今でも健在だと思います。単位もほぼ取り終え、部活も落ち着いてきたので、仲間と共に
「何かしたいね」
と話していました。
「海外にいかない?」
と一人が言い出し、その場で即決しました。
居酒屋で話し合いを進め、三人が別々の国に一人で行き、体験したことをまたここに持ち帰って語り合おうというものでした。
いかにも、暇を持て余した夢見がちな大学生のようでしたが、当時は大まじめでした。まず、海外に行ったことがないので、何から始めればいいのかすら全く分から無い状態でした。ネットを使って調べまわり、パスポートの取得、航空券の手配、日程調整、バイトで資金を稼ぐ等の準備をしました。
行き先は資金面と日程が合えばどこでもよかったのですが、私はインドネシア、あとの二人は中国とペルーへ旅立つことになりました。
初めての海外でパニックに
初めて海外の地に足を踏み入れた時は少しばかりパニックになりました。何からすればいいのか全く分からない状態でしたので、とにかく、その時に泊まる場所を確保して心を落ち着かせようと思いました。
考えれみれば英語を使うのも初めてだったので、これは新鮮で楽しかったです。
タクシーで一番近いホテルへまで乗せてもらい、そこで一泊し、次の日出発しようとした時に事件が起きました。部屋の鍵がないのです。心臓が破裂しそうになりました。一度心を落ち着かせ冷静になって考えてみると、何かで読んだ詐欺の話が頭に浮かびました。
わざと鍵を隠し、それで金を取ろうとしているんじゃないか?!
一度鍵を閉めずに外へ出たので、あの時取られたのでは・・?!
最終的には、宿の人に
「鍵を失くした」
と言ったら、お金を取られ怒られました。
次に、見たいと思っていたケチャ(インドネシア伝統の踊り)のホールへ向かい、近くに宿をとりました。荷物を整理していると、なんとポケットから鍵が出てきました。そのとき私は泣いてしまいました。人を疑うのはこれきりにしようと心に誓った瞬間でした。
次にかねてからやってみたかったヒッチハイクをすることにしました。ほとんどがバイクでしたが、映画で見たように親指を立ててみました。すると子連れのバイクが停まってくれました。
「いやいや三人乗れないじゃん・・・」
と思っていると、その人は子供に降りろと言いました。子供はすんなり下車し、乗るように言われたので乗りました。
「ケチャを見たいんだけど、連れてってくれる?」
と言うと、
「オッケオッケ」と愛想よく振る舞われました。
怪しい子連れのバイクに乗せられて・・・
ここでまた、ガイドブックに載っていることを思い出しました。人を乗せて路地裏へ行き、金をせびるというものです。まあいい、もしやられたら懲らしめてやる、くらいの気持ちで後ろへ乗ると、10分くらい走り、完全に田舎道になりました。
絶対にやられる、きっと仲間が待っていて身ぐるみはがされるんだと思い、冷や汗が止まらなかったです。すると急に大きな演芸場のようなものが左手にシュッと現れました。バイクを停めると、
「着いたぞ、楽しんでおいで。」
と満面の笑みで言われました。
私はまた泣いてしまった。人を疑うのはやめようと決めたのに、また疑ってしまいました。あの人は自分の子供を降ろしてまで、ここまで乗せてくれたのに。
こんなことがありえるのか?カルチャーショックでした。これがきっかけになり、日本でもまれにいるヒッチハイカーを見かけたら乗せてあげることにしています。海外は危ないものだという価値観がこびり付いていましたが、危ない場所へ行かなければ、日本よりも平和なんだってことが分かりました。
それからもインドネシアで出会った人たちは、例外なく限界を超越した優しさで接してくれました。日本へ帰り、私たちはエピソードを交換しました。仲間たちも私と同じように、世界の優しさに感動していました。
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