海外で、病気や不測の体調不良に見舞われると、そうしたら良いか、わからなくなるときがありますよね?風邪程度であれば、常備薬を持っていけばなんとか対処できますが、高熱、腹痛、下痢と、普段と違う症状が出ると、どうしても医者を呼びますが。。。
今回はちょっとした知識が功を奏したというお話です。
シンガポールに家族で赴任
40年以上のサラリーマン生活を卒業した66歳のリタイヤ男子、そう毎日が日曜日族の一人です。この話は私が現役時代の数年間を過ごしたシンガポール勤務時代の事であります。
初めての海外勤務先であるシンガポールには先ず自分が単身で渡り、住宅選びや子供たちの学校入学などの様々な手続きをしてから家族を呼び寄せました。
家族にとっても初めての海外生活、最初のうちは全てが物珍しく、毎日が興味深いものでしたが、一カ月もすると休暇の過ごし方に飽きが出てきました。国が狭いので国内旅行のバリエーションが少なく、既に国内では行くところが無くなっていたからです。
そんな退屈な休暇をもっと刺激的なものにしようと、その年の年末には海外旅行を計画しました。行く先はインドネシアのバリ島、シンガポールからは約2時間半のフライトで、小学生の次男でも何とか退屈する前に到着出来る飛行時間です。
この旅行はシンガポールでの休暇の退屈さからの脱却が目的でしたので「退屈しない旅」がコンセプトの家族旅行として、先ずは飛行時間については合格だったと言えます。
退屈しのぎのバリ島旅行
バリ島と言えばバリダンス、お決まりの島内観光のメインイベントはガムラン音楽で踊る伝統的なダンス「ケチャ」です。上半身裸の男性軍が両手をバンザイのようにして「ケチャ・ケチャ・ケチャ・・・」と叫ぶ中で美女たちが両手の指先を反らしながら踊るあれです。これが始まり、一通り写真を撮り終える頃にはものの見事に長男は飽き、次男も飽き、続いて妻も、そして私も飽きてしまいました。
翌日以降は観光バスによる名所巡りと自由行動、そして自分で選べる食事。この自由行動、特に最終日に関しては家族全員が飽きることなく、夕食では鉄板焼きやアイスクリームの天ぷらまで食べて充実したものとなりました。しかし悲劇はその夜に起こりました。
夜中に突然、激しい腹痛と寒気が・・・
高校生の長男が夜中に腹痛を、それも相当激しい痛みと寒気・・・直ぐにホテルのマネージャーに連絡して医者を手配して頂きました。
約30分で白衣をまとった中年の女医さんが部屋に到着し、早速お腹の触診を始め、聴診器を当てた二分後には診断結果が伝えられました。
「盲腸炎なので直ぐにデンパサールの病院で手術を!」と。
最も退屈しない夜が始まりました。
私は以前友人が盲腸炎になった時のこと、そう、仰向けで右足を抱え込む姿勢をとると下腹部に激痛が走ることを思い出し、その中年の女医の前で長男にその姿勢を取らせましたが激痛はありませんでした。
そして決断!・・・帰ろう!!
私の決断は「明日の朝一番のフライトでシンガポールへ戻ろう!」でした。
女医は「手遅れになると大変・・・」と言いながら白衣を脱ぎましたが、その姿はどう見ても普通の農夫?
私が首を横に振りながら料金を尋ねると「気持ちだけでOK」と???
翌朝のフライトでシンガポールに戻り、日系の病院に直行した際の医師は「食べ過ぎ!バリで腸を切り取られなくて良かったね」と長男の腹をポンと叩いたのでした。
我が家の退屈しない休暇の終わりでした。
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