イタリアは良かれ悪しかれ、日本人に好まれ、多くの方が訪れます。また、イタリアの方も日本人に対しては好感は持っていると思います。その国民性などは、若干ナンパな感じで語られますが、困った時はお互い様というところはあると信じたいですね。
イタリアへ女二人旅
23歳の冬、女友達を誘い、イタリア旅行に行きました。
ミラノから始まりベネツィア、フィレンツェ、ローマというスケジュールだったのですが、最後の地、ローマで事件が起こりました。
まず、友人が地下鉄でバッグをナイフで切り裂かれるという、かなりシャレにならない事態に。
ツアーコンダクターさんに
「今回のプランではローマが最も治安が悪い、気をつけるように」
と強く言われていたのですが、どうも覚悟が足りていなかったようです。幸い友人は上記の注意を受け(また、彼女は海外旅行は初めてだったので)バッグの中にバッグを仕込むという二重の対策を行っていたため、サイフを盗られることはありませんでした。
ショックで少し泣いた後、健気にもローマ観光を楽しもうと務めてくれた彼女には感謝の一語に尽きます。
サイフの代わりに無くしたもの
さすがにもう地下鉄は使わないことにし、ツアコンさんの指示どおりホテルに連絡を取ってタクシーを呼ぼうとしたのですが、そのホテルの電話番号が書かれたメモは友人のバッグの中にありました。朝までは。
つまり、サイフの代わりにメモを紛失したのです。不幸中の幸いではありますが、これはこれで大変な事態。私が自分で管理していなかった落ち度でもあります。責任を取って、友人に代わり、これもまたツアコンさんの指示に従うことに。
まず、大通りのレストランに入りました。時間帯の割には何故か空いているレストラン。
「ボナセーラ」
と、にこやかに迎えてくれた店主らしき紳士に、こちらも満面の笑顔で挨拶を返しつつ、握手を交わしました。1枚の紙幣をてのひらに挟みながら。
ツアコンさんの話では
「ローマで誰かにものを頼む時はこうしなさい、こちらではお金はものごとの潤滑剤、失礼には当たりません」
とのことだったのですが、途端にびっくりした顔になる紳士。
「どうしたんですか、何かお困りですか。お手伝いしますよ、お金なんていりません」
本気で心配そうに英語でいたわってくれるのです。
あまりの居たたまれなさに打ちのめされそうになりながら事情を話して、記憶していたホテル名を伝えると、その場ですぐにホテルに電話を入れてタクシーの手配をしてくれました。
更に綺麗なウェイトレスさんから友人と共に椅子を勧められ、座って無言のままタクシーを待っているところへ出て来たのがエスプレッソ。イタリア語での感謝と謝罪の語彙をもっと豊富に用意しておくべきだったと、ひたすらうなだれました。
イタリア人もいろいろです
もちろん、彼らが人並み外れて善良であった可能性は否めませんし、ツアコンさんの助言が的外れであったとも思いません。ただ、世の中には色々な人がいるのだなあ、と、当たり前のことを心底かみしめました。
それ以来イタリアを訪れる機会に恵まれずにいるのですが、もしもまたローマに旅することがあったら、とりあえず地下鉄ではバッグは二重にし、ホテルやタクシーなど重要なメモは数枚用意して分散し保管、何よりもイタリア語をもっと修得しておこうと誓っています。
イタリア語が話せれば自分でホテルに電話もできるし、タクシーの運転手さんに行き先も告げられ、親切にしてくれた方にもっと的確に感謝を伝えられますから。
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